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病気による就業制限・出勤停止と所得補償及び休業手当の関係

 
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初めまして。西井義典と申します。 三重県松阪市で内科クリニック、デイサービス、通所リハビリ、グループホーム、有料老人ホーム等を経営している医師です。 外来の診察では忙しくなかなか伝えられない医療費や介護費用の節約術を伝えたいと思います。

健診により就業制限となった時

重症高血圧で夜勤不可

新患さんで、職場の健診で重度高血圧(診察室で180/110ぐらいでした)を指摘された方がいました。

職場からの紹介状と就業制限(夜勤の禁止など)が記された用紙を持って来院されました。

重度高血圧なので、即座に内服治療開始となります。

ある程度血圧を下げないと就業制限も解除してもらえないのでスピード感を持って加療開始です。

しかし急に血圧を下げ過ぎるとふらつきなどの副作用が出てきます。

血圧手帳を渡し家庭血圧の測定・記入をしてもらい頻回に外来を受診して降圧することにしました。

 

就業制限中の所得補償はどうなる?

さてこの就業制限がかかっている間は夜勤などができませんが、その分の所得補償を会社は認めてくれるでしょうか?

普通は貰えないと何となく思いますが、これは労働者が労働者側の事情により就業ができないものとなりますので、会社側には賃金支払義務がありません

 

感染症で就業制限の場合の法的問題

ではインフルエンザなどの感染症ではどうかというと安全衛生法では、伝染病の疾病や他の疾病にかかった労働者に対して、使用者は就業を禁止するよう定めています。

労働安全衛生法施行規則第61条

「病毒伝ぱのおそれのある伝染性の疾病にかかった者については、その就業を禁止しなければならない。ただし、伝染予防の措置をした場合は、この限りでない。」

 

感染症による出勤停止命令

感染症法に該当する感染症の場合は、労働安全衛生法上の就業禁止ではなく、感染症法上の規定に委ねられます。

感染症で会社が休職命令を出せる場合の関連する法令

 

条文出勤停止命令者就業規則記載の要否休業手当支給の要否 
感染症法第18条法による強制及び都道府県知事不要不要 
労働安全衛生法第68条法による強制不要不要 
労働契約法第5条事業主必要必要 

上図のように感染症にかかった従業員への出勤停止命令は、法的に出勤が禁止されているものと事業主が職場内の安全配慮より禁止するものとに分類されます。

法的に出勤停止させる感染症は種類が厚生労働省令により決められております。

この感染症に該当する場合、休業手当の支払義務もありませんし、給与の支払義務もありません。

この為、出勤停止期間中の給与を削減することができます。

 

感染症法第18条による出勤停止命令

感染症法18条には1類~5類および新型インフルエンザが規定されています。

このうち、下表にある1類~3類までの感染症および新型インフルエンザは、法により出勤停止となります。

ただし、4類及び5類は出勤停止となりません

この分類表は厚生労働省により追加や修正が加えられますので注意が必要です。

1類エボラ出血熱 、クリミア・コンゴ出血熱、痘そう、南米出血熱、ペスト 、マールブルグ病、ラッサ熱
2類急性灰白髄炎 、結核 、ジフテリア 、重症急性呼吸器症候群(病原体がベータコロナウイルス属SARSコロナウイルスであるものに限る。)、中東呼吸器症候群(病原体がベータコロナウイルス属MERSコロナウイルスであるものに限る。) 、鳥インフルエンザ(H5N1) 、鳥インフルエンザ(H7N9)
3類コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス、パラチフス
その他新型インフルエンザ

出展:厚生労働省 感染症法に基づく医師の届出のお願い

 

現実的には1類~3類までの感染症および新型インフルエンザを発症したら体調不良で仕事どころじゃありません。

 

インフルエンザ

新型インフルエンザ及び鳥インフルエンザ(H5N1)は、出勤停止命令の対象となります。

従来からあるインフルエンザ(いわゆる季節性インフルエンザ)は、出勤停止命令の対象外です。

なお、鳥インフルエンザ(H5N1)は2類感染症、その他の鳥インフルエンザは4類感染症に指定されています。

新型インフルエンザ等感染症は独立して類型化されています。

まとめると下表のようになります。

感染症名出勤停止命令休業手当の支給要否
新型インフルエンザ法による強制不要
鳥インフルエンザ(H5N1)法による強制不要
 その他のインフルエンザ事業主の判断必要

 

ノロウィルス

ノロウィルスは、食品関連の会社では非常に注意が必要な感染症です。

ノロウイルス感染症は、前記載の感染症法第18条で規定されている5類感染症に位置づけられた「感染性胃腸炎」の一部となっています。

ただし、5類感染症は感染しても就業制限はなく、従業員を休ませる場合は「会社都合の休職( 使用者の責に帰すべき事由による休業)」となり休業手当を支給する必要があります

従業員が自主的に休んだ場合は、会社都合の休職とはなりません。

基本的にはノロウイルスで会社を休む場合は、有給休暇を取得して休むことになると思います。

感染症名出勤停止命令休業手当の支給要否
ノロウィルス
(5類感染症)
事業主の判断必要

しかしいずれの場合も就業規則に記載がしていないと労使トラブルの原因となりやすいので注意が必要です。

 

就業規則のポイント

  1. 法律で定める伝染性疾患は就業を禁止・制限する
  2. 私傷病による業務を提供できない場合にも就業を禁止・制限する
  3. 就業禁止・制限期間は「無給」となることを定める。

です。(※労災の場合は3日目までは事業主負担の所得補償、4日目以降は休業補償給付となります)

 

まとめ

  • 労働安全衛生法施行規則第61条では、「病毒伝ぱのおそれのある伝染性の疾病にかかった者については、その就業を禁止しなければならない。ただし、伝染予防の措置をした場合は、この限りでない。」
  • ただし、感染症法に該当する感染症であれば、労働安全衛生法上の就業禁止ではなく、感染症法上の規定に委ねられる
  • 国による措置を超えて、会社が独自に休みを命じた場合には、賃金(休業手当)の支払義務は発生する
  • 十分な労務提供ができなかったり、他の従業員への感染の恐れもあることから、労務提供の受領を拒否することは可能
  • スムーズに休業させるためにも、事前に就業規則に規定しておくことが適切

 

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