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6.職務中のけが・病気は労災を利用する

労災保険について

 

仕事が原因で発生した従業員の病気やケガ、死亡などに対しては、たとえ過失がなくても会社が一定の補償をすることを労働基準法で義務づけています

しかし、会社に支払い能力がなかったり、損害額が高額になったりすると、従業員が十分な補償を受けられない可能性があります。

そこで、従業員を1人でも雇った事業所には労災保険に加入することを義務づけ、労働者が仕事中や通勤の途中で病気、ケガ、障害を負った場合の治療費や休業中の生活費の補償、死亡した場合の遺族補償などが滞りなく行われるようになっています。

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労災保険の補償対象

補償の対象になる人は、その事業所で働くすべての労働者です。

正社員だけではなく、派遣社員でも、パートタイマーでも、アルバイトでも、日雇いでも、差別なく補償を受けられます。

たとえ不法滞在していた外国人労働者だとしても、業務中の病気やケガには労災保険が適用されることになっています。

保険料は、健康保険や厚生年金保険などと同様に、従業員の給与やボーナスなどの総額に一定の保険料率をかけたものが徴収されます。

この保険料率は、労災事故が起こる確率によって業種ごとに決められており、危険な作業を伴うことがある林業・漁業、鉱業、建設業などが高く、室内作業を主とする製造業や販売業などが低くなっています。

もっとも高いのは「水力発電施設、ずい道等新設事業」の0.88%、もっとも低いのは「製造業(計量器、光学器械、時計等製造業)」「その他の事業(通信業、放送業、新聞業または出版業、金融業、保険業、不動産業)」の0.25%です。

ただし、これは全額会社が負担します。

労災保険は会社が従業員の病気やケガなどを補償するために加入するものなので、従業員は保険料の負担なしで補償を受けられます。

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労災保険の補償内容

補償内容は、病気やケガの治療に必要な医療費を補償する「療養補償給付」。

働けない間の賃金を補償する「休業補償給付」。

障害が残った場合の「障害補償給付」。

死亡した場合に残された家族に支払われる「遺族補償給付」などがあります。

このほか、葬祭料、介護補償給付などもありますが、とくに覚えておきたいのは最初にあげた「療養補償給付」です。

 

仕事中や通勤途中の病気やケガは労災指定病医院を受診する

労災保険の「療養補償給付」は、健康保険の「療養の給付」に当たるもので、仕事を原因とした病気やケガの治療に必要な医療費の全額が補償されます

健康保険と異なるのは、医療費の自己負担部分です。

健康保険で医療機関を受診すると、窓口では、かかった医療費の3割(70歳未満の場合)を負担します。

しかし、労災保険にはこの一部負担金がありません。

医療費の全額が労災保険から補償されるので、仕事中や通勤途中の病気やケガの場合、患者は自己負担なしで医療を受けられるます。

労災なのに健康保険を使うと、あとで健康保険の取り消し申請をして、労災保険に切り替える手続きをとらなければならず厄介です。

最初に受診したときに、労災であることを医療機関の窓口で伝えておけば面倒な手続きをとらなくてもいいので、きちんと伝えるようにしましょう。

また、会社にも労災保険を使ったことを伝えて、証明書をもらっておきましょう。

受診したのが労災指定病医院なら、医療機関が、直接、労働基準監督署にかかった医療費を請求してくれるので、患者は窓口では医療費を支払う必要はありません。

しかし、労災指定病院ではない場合は、窓口ではいったんかかった医療費の全額を支払い、あとで労働基準監督署から払い戻してもらうことになります。

いずれも最終的な自己負担はありませんが、一時的とはいえ医療費の全額を立て替えるのは大変です。

というのも、労災保険で受診する場合の医療費は、健康保険で受診するよりも高く設定されています。

病院や診療所で行われる検査、投薬、手術など診療行為は、ひとつひとつ国が価格を決めています。

この価格を診療報酬といい、静脈注射は30点、500ml以上の点滴は95点などと点数で表示されています。

健康保険では、この診療報酬に1点あたり10円をかけたものが実際の医療費になります。

しかし、労災保険は1点あたり12円なので、単純計算でも2割増しになります。

また、医療費の基本料金である初診料も、健康保険が2700円なのに対して、労災保険では3640円に設定されるなど、健康保険より労災保険で受診するほうが医療費は割高なのです。

労災指定病医院以外では、この割高な医療費の全額をいったん患者が立て替えなければなりません。

交通事故など突然の事故で受診するような場合は病院を選んでいる時間はありませんが、内科系、精神科系などの病気で受診する人は、事前に労災指定病院かどうかを調べておくといいでしょう。

最寄りの労災指定病医院がどこにあるかは、労働基準監督署のホームページなどで調べることができます。

ただし、仕事中、通勤途中の病気やケガすべてに労災が適用されるわけではありません。

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労災保険の補償が適用されるケース

どのようなケースなら労災が適用されるのか、具体的に見てみましょう。

 【業務災害】
労働時間や残業中にケガをしたり、仕事が原因で病気になったりした場合を業務災害といいます。

認められるかどうかの判断基準は、病気やケガをした理由に仕事との因果関係があること。

また、会社の支配下にあったときに起きた労災事故かどうかで判断されます。

休憩時間中の事故は原則的に補償されませんが、会社内の施設が原因で起きた事故なら補償されます。

○認められる
・昼の休憩時間に社員食堂に行こうとして転んでケガをした
・出張中に事故にあった
・自社工場のライン作業中にケガをした

×認められない
・社内恋愛のトラブルに巻き込まれて同僚に殴られた
・休憩時間中に外出して事故にあった
・取引先と飲みに行って、食中毒を起こした

 

 【通勤災害】
仕事をするために合理的な交通手段、経路で自宅と事業所を移動している場合に起きた事故などが原因の病気やケガを通勤災害といいます。

交通手段は、公共交通機関のほか、車、自転車、徒歩などで、複数経路も認められます。

ただし、通勤途中で寄り道をした場合は、日常生活に必要な行為かどうかで判断します。

○認められる
・朝の通勤電車で事故にあって骨折した
・単身赴任先から自宅に帰る途中に事故にあった
・会社帰りにスーパーに寄って買い物をした帰りに事故にあった

×認められない
・退社後にコンサートに行った帰りに事故にあった
・同僚と飲んだ帰りに、因縁をつけられて殴られた
・時間を潰すために遠回りをして帰って運悪く事故にあった

たんに「会社にいた」「通勤中だった」というだけでは、労災は適用されないこともあります。

判断に迷った場合は、勤務先を管轄する労働基準監督署に相談し、該当するかどうかを確認しましょう。

 

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「労災かくし」は犯罪です。困ったら労基署に相談を

このように正当な理由があれば、労働者は誰でも労災保険は利用できます。

そして、仕事中に事故が起きて労働者が病気やケガ、死亡などをした場合、事業所はすみやかに「労働者死傷病報告」を労働基準監督署に届け出なければなりません。

しかし、本当なら労災が適用される事故でも、会社が労災を使わせてくれずにトラブルに発展しているケースもあります。

理由のひとつとしてあげられているのが労災保険の「メリット制」です。

これは、一定規模の事業所に適用されているもので、労災事故の発生率などによって保険料に差をつける仕組みです。

前述したように、労災の保険料は業種ごとに決められているが、同じ業種でも事故が起こる確率は会社ごとに異なります。

ふだんから災害防止の努力をして事故が少ない事業所と、環境整備をせずに事故が多いままの事業所と同じ保険料では不公平という観点から、その保険料には最大で±40%の差があります。

メリット制の適用事業所では、それまで保険料が低かったところで労働者が保険給付を受けると保険料が上がってしまうこともあります。

これを恐れて労働基準監督署に報告しないという悪質な事業者もあります。

また、建設現場などで下請け会社の労働者がケガした場合、本来なら元請け会社の労災保険を使うべきところを、力関係にものを言わせて下請け会社に押し付けるといったこともあります。

これが、いわゆる「労災かくし」です。

このほかにも、「勤務中にケガをしたのに、アルバイトだから労災は使えないと言われた」「労災の手続きをしていないから、健康保険を使うように言われた」「元請会社の工事現場でケガをしたのに、自社の資材置き場で起きたことにした」いった例もあります。

しかし、たとえ勤務先が加入を怠っていたり、事故が起きたのに労働基準監督書に届出をしていなくても、労働者は労災保険から補償を受けられます。

「労災を使うと会社から嫌がらせを受けるのではないか」と心配する人もいますが、業務災害・通勤災害の補償は労災保険を使うことが法律で決められており、健康保険を使ってはいけないことになっています。

心配せずに堂々と使うべきであり、それを理由に嫌がらせを受けたような場合は、労働基準監督署に相談をしてみましょう。

「労災かくし」が発覚した場合、労働者が罪に問われることはないが、管理者には50万円以下の罰金などが科せられます。

加入の届出を怠っていた事業所は、過去2年分の保険料の徴収、保険料のメリット制を受けている事業所は還付金の没収などの罰則もあります。

労災かくしは犯罪です。

従業員の命を守る管理者には、このことを肝に銘じて法令を順守してもらいたいです。

 

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